
第四十四章 乱歩・気流 敗れる?
一方、アサルトハイドチームは。
「はあ~。まさか最後の最後で破られるなんて~。正直ゾクゾクしたわ」
まるで、全身が敏感にでもなっている様に、自分を抱きしめ、身震いする遥。
「知留ちゃん。大丈夫?」
「うん、まだまだ行けるよ」
賀古が知留を気にかけると、知留は笑顔で答える。
「向こうは後半戦からエクストラロードを行使してくるはずだ。こちらもここからは出し惜しみはしない」
スポドリを飲み、汗をタオルで拭きながら、冷静沈着でいた飛翔。
「ええ。第三クウォーターの後半からイリアスさんを投入します。なので飛翔さんとイリアスさんで、向こうのオフェンスとディフェンスを、明鏡止水、抜刀で攪乱してください」
「はい」
「承知した」
銅羅の指示に、迷う事なく頷くイリアスと飛翔。
「それにしても、明鏡止水、抜刀、がここまで機能してくれるとは」
「はい。あの技はメリットが目に付きますが、リスクもあります」
銅羅とイリアスが理亜たちを見ながら、まるで過去を見つめてるかの様に語る。
「ええ。そのリスクには、おそらく由紀子さんは気付いているでしょう。それを公言しないと言う事は、イリアスさんの手前、贔屓したくないのでしょうね」
頬に笑みを浮かべながら、口にする銅羅。
「私なら気にしないのですが、それでもやはり、師匠の寛容の深さには感服します」
イリアスはどこか嬉しそうにしていた。
「そう言えば監督。知留ちゃんの例の秘策、まだ出さなくていいの?」
ふと何かに気付いた様な面持ちで口にする代野。
「そうですねえ。……そろそろ頃合いですかねえ」
嫌な笑い方をする銅羅。
銅羅が狙っている秘策とは?
第三クウォータが開始され、メンバーは変わらず。
そこで、いよいよ芙美が勝負に出る。
「すまぬが、お主では我は止められぬ」
「えっ?」
芙美がスリーポイントラインからシュートを打った。
それをブロックしようとジャンプした賀古。
しかし、賀古の手はボールをすり抜ける様にからぶってしまう。
すると、二人目の芙美が、右サイドのハーフラインからと、左サイドのスリーポイントラインから時間差をつけシュートを打つ。
これでは飛翔も、明鏡止水、抜刀で防げず、悔しそうな表情で見送るしかなかった。
知留も混乱気味だった。
それでも諦めず、高貴のスクリーンを躱し、ジャンプする。
二回目に打たれたボールを、リングの真上で弾こうとするが、通り抜ける様にからぶってしまい、ハーフラインで打たれたシュートが見事決まる。
「よしっ! 活路が見えてきた!」
奏根はガッツポーズする。
芙美は戻りながらエノアたちとハイタッチする。
これで点数は、八十三対百四
「エクストラロード解放早々、申し訳ないが頓挫させてもらおう」
そこで、飛翔の目付きが変わった。どこか凛々しさを感じさせながら。
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