
第四十四章 乱歩・気流 敗れる? 三話
そこで、由紀子は飛翔をじっくり観察し、ある答えに辿り着いた。
「ピー! タイムアウト! シャルトエキゾチックチーム!」
そこで、豪真も何かに気付いたのか、由紀子が何かを言う前に、タイムアウトを取っていた。
理亜たちは「お疲れ」と声をかけると、奏根たちにスポドリを渡す。
「あれは、どう言う事でしょう?」
高貴が怪訝な面持ちで汗をタオルで拭きながら口にする。
「あれは五番のエクストラロードだ。あの子が指を鳴らしてから、ボールが叩かれるようにしてあの子の元に戻っていった」
「私もそう見えた。恐らく、指を鳴らすことで、見えない物体を生み出し、何かを叩く、と言う異能だろう」
由紀子と豪真は眉を顰める。
「あれじゃあ、芙美ちゃんが乱歩・気流で幻影を生み出しても、全てに指を鳴らし、幻影のボールも本物のボールも見えない物体で叩かれてカットされちゃうね」
聖加が陰鬱な表情で口にする。
「案ずるな。まだ我には手がある。と言っても意味をなさぬかもしれぬが」
芙美は冷静に口にすると、奏根が暫し考え、芙美の背中をポンと叩き「俺もどこまでやれるか分かんないけど、サイクロンネクストで応戦する。お互い気張るぞ」と激励の言葉をかける。
芙美は少し笑みを浮かべながら頷く。
一方、アサルトハイドチームは、特に指示もなく、各々が飲み物を口にしたり、戦術を練るなどして語り合っていた。
「飛翔さんのエアコネクト。音を鳴らす事で、空気圧を発生させ、飛翔さんの指定した物体に圧縮された空気が破裂し空気を叩きつけると言う手法。これは乱歩・気流とは相性が悪そうですね」
「そうは言っても、私のエクストラロ―ドはコモンクラスだ。加えてあの乱歩・気流はエピッククラス。まだあれには未知の要素があると見た」
イリアスと話していた飛翔。
飛翔は汗を拭きながら芙美に鋭い目を剥ける。
そこで、飛翔がうずうずしている様な落ち着きのないイリアスを見て「お前も出たいのか?」と口にする。
「はい。芙美さんの乱歩・気流と手合わせしたいと言う思いはあります」
落ち着いた声音の中に、闘志が宿っていた。
そこで、飛翔は頬に笑みを浮かべる。
「監督。そろそろイリアスを出させてもらえぬか?」
「そうですね。ここで一気に畳みかけるとしますか」
普通は、ピンチの時に戦力を上げるものだが、イリアスの提案に、銅羅はニヤリと笑みを浮かべ、審判の元に向かい、メンバーチェンジを要求する。
タイムアウト終了のブザーが鳴ると、奏根たちボールから始まる。
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