クリーチャープレイバスケットボール 第四十四章 乱歩・気流 敗れる? 二話

第四十四章 乱歩・気流 敗れる? 二話

 飛翔にパスが回ると、すぐさま、芙美が乱歩・気流で、残像を賀古の前に残し、本体の芙美が音も無く飛翔に近付く。

 「無駄だ」

 静かに一言だけ冷静に口にすると、飛翔は誰も居ないはずのペースに、ボールを投げた。

 突然の事にエノアと背後から近付いていた芙美は一驚する。

 誰も居ないはずの左サイド。

 そこで、観客の声援に混じって、何かが聞こえた。

 すると、誰も居ないはずの空間のはずなのに、そこからボールが帰ってきた。

 エノアを通り過ぎ、その前で、帰ってきたボールを掴み、ドリブルして前に進んでいく飛翔。

 「明鏡止水、抜刀、二の太刀!」

 またもやフリースローラインから斜め前に跳躍し、ヘルプで駆けつけた奏根を抜き去り、レイアップシュートを決めた。

 「何がどうなっている?」

 お決まりのエンジョーイと言う謎のオペラ歌手が脳裏を過る暇すらなかった豪真。

 理亜たちは、ただ、ただ、呆然とする。

 「何あれ?」

 「いえ、私もさっぱりです」

 信じられない物でも見ているかのような聖加と高貴。

 後ろを振り向き、何事もなかったように、自分たちのコートに戻る飛翔たち。

 「どう言うカラクリだ」

 「前にも言ったけど、動揺してる暇があるなら分析しな」

 豪真も頭がクリアになるくらい動揺していると、由紀子は渋い面持ちで正論を口にする。

 すぐにエノアにパスが回ると、エノアはまた飛翔が飛び込んでくると思った。

 しかし、今度の飛翔は、ゆっくりとエノアに近付いてくる。

 目に見えない不気味さ。

 それを肌で感じ取ったエノアは、このままボールをキープしてるのは危険、と判断し、すぐに芙美にパスを出す。

 芙美は賀古のマークを外れ、いつでもパスを受け取られるようにポジションに着いていた。

 「そのボールは既に私の手中だ」

 飛翔が指を鳴らす動作をする所をしっかりと目にしたエノア。

 すると、パスして、宙にあるボールが、なんと何かに叩かれた様な効果音を出し、飛翔の所に向かって行く。

 それを驚愕して見る理亜たち。

 ボールを手にした飛翔はハーフラインを過ぎ、スリーポイントライン付近に近付くと、待ち構えていたエノアと接触する。

 エノアは何が何でもボールを奪おうと、右手でドリブルしていた飛翔のボールに手を伸ばす。

 しかし、焦ったのが仇となり、飛翔はロールターンで左にクルリと回り、エノアを抜く。

 すると、スリーポイントラインを打とうとしたのか、それがとてもジャンプシュートに見えなかった。

 飛翔はエノアを横切るや否や、リングの四角のマス目掛け、ボールを投擲する。

 流石に強く投げつけられては、飛翔のボールをすぐにカットするのは不可能に近い。

 そのボールは、どう見ても、四角いマスにぶつかり、跳ね返ってくるのが目に見えていた。

 しかし、そのボールは、リングの輪辺りで、真下に急降下する。

 何かに叩きつけられたかのような効果音が鳴り、真下に下り、飛翔が投げつけたボールは決まってしまう。

 これで点数は八十三対百九。

 観客たちは熱に熱を込めた歓声を上げる。

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