
第四十四章 乱歩・気流 敗れる? 五話
高貴がエノアにパスを出すと、パスを出して宙にあるボールが何かに下から叩かれたように上にボールが跳ね上がる。
まさかの光景に、一驚する高貴とパスを受け取ろうとしたエノア。
飛翔がエアコネクトで、指を鳴らし、下から空気圧を弾けさせ、ボールを跳ね上げらせたのだ。
すかさず、イリアスがそのボールをフリースローラインから跳躍し、キャッチすると、間髪入れずダンクで決める。
点数は八十三対百十四。
第三クウォータが始まって一分二十四秒、まだ点を一度も取れていない芙美たち。
エノアは手渡しで芙美にパスを出す。
ドリブルして敵チームのコートに向かおうとした瞬間、芙美は乱歩・気流で五人の幻影を作る。
その幻影たちは本物の芙美を合わせ、横一列に並ぶように四散していく。
飛翔は、指を鳴らしエアコネクトで空気圧を発生させ弾けさせる。
しかし、狙った芙美は幻影だった。
「悪いがここからが童の真骨頂だ」
飛翔のエアコネクトで一度消えたはずの芙美の幻影が、同じポジションで現れる。
これには銅羅たちは、嫌でも目を剥く。
失ってもすぐに幻影を補充できる様になった芙美。
これには飛翔も、目の色を変えて、エアコネクトを連発する。
しかし、何度も外れを引き、幻影がエアコネクトで消える度に、芙美は乱歩・気流を発動し、失った人員を補う。
そうこうしている内にスリーポイントラインにまで近付いた芙美は、幻影五人と共にジャンプシュートを打とうと跳躍する。
そこで、イリアスがとんでもないスピードで、一人の芙美に近付いていた。
芙美の顔色がそこで変わった。
芙美はブロックされる寸前に、奏根にパスを出す。
「よしきた!」
奏根はパスを受け取ると、ボールをしっかりと両手で握り、片足を軸にクルクルと回りだす。
周囲に竜巻を発生させ、その渦の中で跳躍する奏根。
とぐろを巻く様にしてハーフラインからサイクロンシュートネクストを決めようとする。
そこで、飛翔がジャンプし、奏根の元に辿り着くと、明鏡止水、抜刀、一の太刀で竜巻をかき消す。
奏根は計算済みだった。
ボールを抱きかかえる様にして、絶対に渡さないと言う意気込みが伝わってくる。
飛翔はエアコネクトでボールを奪おうとしたが、奏根は抱きかかえる様にしてボールをしっかりと掴んでるため、それが出来ない。
飛翔の目には焦燥が見えていた。
そこで、知留が優位なポジションを取ろうと、ゴール下で高貴とスクリーンをかけあう。
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