クリーチャープレイバスケットボール 第四十四章 乱歩・気流 敗れる? 七話

第四十四章 乱歩・気流 敗れる? 七話

 代野の前に聖加が立ち塞がる。

 スリーポイントラインで代野がレッグスルーで右手にボールを持ち替え、右斜め前に出すと、シャムゴットで後ろに引く。

 聖加は斜め前に出たボールに身体が出てしまい、その隙に、代野はフロントチェンジで左手にボールを持ち替えると、左から抜く。

 代野はそのままダンクで決めた。

 八十三対百六。

 理亜たちは立ち上がり、遥の身を案ずる。

 「大丈夫⁉ 遥⁉」

 「ええ、大丈夫よ~」

 賀古が賢明に遥に呼びかけると、額から血を流し、ウインクする遥。

 「大丈夫ではありませんね」

 銅羅はすぐにレフリータイムを取る様に審判に要請すると、審判のお兄さんはレフリータイムを取る。

 少し、額が切れてしまい、傷口は大したことではないのだが、頭部なため、出血が中々止まらない。

 救護スタッフが血をガーゼで拭い、消毒液を付け、ガーゼで傷口を抑える様にしてテープで止める。

 「大事にならなくて良かったです。ですが……」

 出血も収まりはしたが、既にガーゼからは血が滲み出ていた。

 確かに傷としては浅いが、また出場させれば、出血が酷くなってしまうと言う懸念がある。

 銅羅は少し間を置き、一度深く深呼吸をすると、ニコニコしながら銅羅の判断を待っている遥に「遥さん。残念ですが、ここで引いて貰えませんか?」と切ない表情で口にする。

 遥は少し寂しそうな表情を見せる。

 そこで、遥がメンバーチェンジする事になった。

 「大丈夫じゃん?」

 「分からないです。ただ、メンバーチェンジさせるとなると、軽傷ではないのかもしれません」

 静香がしょんぼりしていると、加奈も少し俯いてしまう。

 「安心しろ。見た感じ、傷は大したことはない。頭部を切れば、出血は酷い。ましてやその状態で動けば血管破綻にさらに刺激を与え、血液凝固因子が活発し、連鎖反応を起こす。止血したら安静にするのがベストだ」

 眉を顰め心痛な思いで口にする豪真。

 「あんた、藪医者のくせによく知ってるね」

 「えっ! 監督藪医者なの⁉」

 そこで、由紀子が不敵な笑みでそう言うと、智古たちは驚く。

 「ちょっと、冗談は止めてくださいよ。ちゃんと医師免許ありますから」

 慌てふためきながら反論する豪真だった。

 相手がメンバーチェンジしてきたので、スタミナの事も考え、エノアと聖加を交代させ、加奈と智古がコートの上に立つ。

 賀古が遥と交代し、試合は再開される。

 高貴はすぐに芙美にパスを出す。

 パスを受け取った芙美は、乱歩・気流で五人の幻影を生み出し、相手コートに向かって行く。

 イリアスがディフェンスに入り、芙美の前に立つと。

 「明鏡止水、抜刀、一の太刀!」

 飛翔と対になるセンスで、芙美のボールを高速で横切るカットしようとした。

 しかし、その芙美は幻影だった。

 飛翔は、芙美と思わしき人物に、次々と、エアコネクトを連発する。

 悉くはずれを引く飛翔。

 芙美は幻影が消える度に、乱歩・気流を発動させ、常に五人の状態を作る。

 おまけに芙美は、先程イリアスが幻影を見抜いた理由を分かっていた。

 それは、飛翔が、エアコネクトで次々とかき消していく芙美を観察していたイリアスが、分析し、消えた幻影と再び生み出した幻影の位置を把握し、本物の芙美を特定したのだ。

 それを芙美は分かっていたため、かく乱として、芙美同士がすれ違い、シュッフルするようにして、本物の特定を惑わしたりする。

 それによってイリアスも困惑し始める。

 そして、五人の芙美が断続的な時間差でジャンプシュートをする。

 イリアスと賀古が芙美のジャンプシュートをブロックしようと跳躍すると、芙美はフェイダウェイシュートをした。

 それには銅羅も思わず立ち上がり驚愕する。

 仮に、イリアスと賀古がブロックしたのが幻影だったら、飛翔がエアコネクトで残りの芙美のボールをカットしてくるはず。

 おまけに、知留は、またもや力を入れてからの脱力し、高貴のスクリーンをかわし、高貴のバランスを崩してくる。

 少しでも、本物のシュートが幻影とどちらなのか? 本物のシュートを間際らしくする確立を上げるため、幻影のシュートを本物のシュートと錯覚させる必要がある。

 だからこそ、芙美は、磨き上げた乱歩・気流でフェイダウェイシュートまでできる様、進化した。

 しかし、芙美の進化はこれだけではなかった。

 五本のシュートの内、二本のシュートが飛翔のエアコネクトでかき消され、残り三本のシュートが、リングの中に入ろうとしていた。

 そこで、知留が一か八か、ジャンプし、一本のシュートに狙いを定め、リングの中に入ろうとする寸前、片手を振るう。

 しかし、それは空振り、本物のボールだけが、コートの上で弾む。

 流石と言うべきか、審判のお兄さんは、五人の芙美の配置と、ボールがどの芙美から放たれたのかしっかりと分かっていたため、スリーポイントラインからのシュートと断言し、液晶パネルの数字が変わる。

 八十六対百六。

 第三クウォータが始まり、ようやく点を入れる事が出来たシャルトエキゾチックチーム。

 ここから巻き返しとなるか?

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