クリーチャープレイバスケットボール 第四十五章   影の正体 一話

第四十五章 影の正体 一話

 試合が動く中、善悟がツエルブに正に突き刺されそうな瞬間だった。

 グサッ!

 「うぐっ!」

 ツエルブを横から突き飛ばした際、ツエルブの左横腹に鋭利な刃物が突き刺さると、その何者かが、ツエルブごと、押し倒した。

 「お、お前は⁉」

 「言ったはずだ。お前を殺す理由が出来たと」

 ツエルブの腹の上にまたがり、横腹に突き刺したナイフを抜き出したのは、明人だった。

 明人はお面など被っておらず、素の顔だった。

 それには善悟や輝美も驚愕する。

 そして、明人は、ツエルブが手にしていたナイフを蹴り、地面に転がした。

 「お前か? 網羅聖に肩入れしていた連続殺人鬼は?」

 「……はい、そうです」

 輝美は脳裏に過った。

 今まで大企業の社長が殺され続けていた事件を。

 そして、その殺人は常に胸に一回ナイフを刺しただけの犯行。

 ツエルブの様な異常者が、一回突き刺す程度で犯行を追えるはずがない。

 輝美は分かっていた。

 強姦紛いの連続事件。

 その事件性は常に異常だった。

 刃物でめった刺しにするなど、正気の沙汰ではない。

 なので、そこまでの異常者はツエルブであって、温厚そうに見えた、一突きで殺人をする犯人は別にいるのでは、と。

 それが目の前に現れ、輝美は明人が銅羅聖に肩入れした共犯者のような人物だと察した。

 「……所まで来てもらうぞ」

 「……はい……でも、その前に」

 輝美が同行を要請すると、暗い表情で返事をする明人。

 しかし、明人は逮捕される前にやらなければならない事があった。

 その目は痛みで悶えながら笑っているツエルブに向けられる。

 「奇遇だな。俺らもこいつに用があるんだ」

 善悟たちはツエルブに近付き鋭い眼差しをツエルブに向ける。

 「ヒハハハハ、何終わったような面してんだスフィア。いや、明人。お前らは俺を殺したくて仕方ないだろうが良いのか?」

 「この期に及んで何言ってやがる。お前はもう詰んだんだよ」

 殺意を込めて、狂って笑っているツエルブに銃口を向ける輝美。

 「そうか? 俺から真犯人、つまり俺に指示した奴の情報を俺が握っていたまま、闇に葬る気か?」

 「知ってるよ。網羅聖の銅羅だろ。そいつも後で逮捕する。こいつの証言だけあれば十分だ。お前は用済みなんだよ」

 気狂いして挑発してくるツエルブの言葉を意にも返さず圧をかける輝美。

 今すぐにでも、引き金を引こうとしていた。

 「待ってください。確かに銅羅は、大手企業の社長や、店舗の支店長など殺す様に僕に指示を出しましたが、こいつはそれとは別の人間が指示を出しています。

 「なっ、そうなのか?」

 「はい」

 少し落ち着かない素振りで口にする明人に、善悟は眉を顰める。

 「それも後でお前から聞けば済む話だ。こいつに殺しを指示した人間と銅羅を捕まえ、この事件は終わりだ」

 輝美は明人の言葉に物怖じせず、いい加減に引き金を引こうと、気持ちを高ぶらせたその時。

 「イヒハハハハッ! 残念だったな。いいか明人。真のサイレントトップアサシンは他に居る。この意味が分かるか?」

 「ま、まさか⁉」  

 相手を翻弄する事を何よりも娯楽としているかの様なツエルブの笑みに、明人は目を大きく開き、ある事を思い出した。

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