
第五十一章 答え 一話
「今生の別れは済んだか?」
出入り口の廊下の前で、輝美と善悟が待ち伏せていた。
輝美は敵意を銅羅に向ける。
「ええ。お陰様で。それにしても意外ですね」
「ん? 何がだ?」
澄んだ瞳で、焦り一つもない声音で口にする銅羅に、善悟は怪訝な面持ちになる。
「わざわざ選手たちとの別れの言葉の時間を設けてくれた事ですよ。てっきり、乗り込んでくると思ったんですがね」
「俺たちもそこまで無粋な事はしない。ダークサイドの舞台とはいえ、選手一人一人は純粋無垢な子らだ。そんな神聖なステージに土足で足を踏み込むことはしない」
銅羅の言葉を鼻で笑い、敬意を見せる輝美。
どこか尊く、敵意に満ちた声音。
「ありがとうございます。で、私の罪状はもうご存じなんですよね?」
何の恐怖も焦燥もなく、淡々と口にしながら、銅羅は両腕を輝美に差し出す。
すると、輝美は身を引き締め「富芽銅羅、殺人幇助、及び、殺人教唆の容疑で逮捕する!」と声を上げ、銅羅の両手首に手錠をかける。
逮捕されても、眉一つ変えない銅羅。
そのまま、警察と救急車が呼ばれ、明人と銅羅は別々のパトカーに乗り、救急車に輝美と善悟が運ばれた。
その間、理亜たちは表情式に出席していた。
「これより、クリーチャープレイバスケットボールの優勝者たちに、百億円の贈呈に入ります」
司会を務めていたのは、先程の審判のお兄さん。
銅羅の代理で、コートの中に新たに設置された檀上の上で立つ審判のお兄さんの横には、キラキラと輝く札束の山が、テーブルの上に置かれている。
それを入れるためのアタッシュケースもすぐ横に置かれていた。
「ど、どうしましょうー。本当に私たち、百億円手にするんですか?」
あたふたしながら取り乱す加奈。
しかし、加奈だけではなかった。
「こ、こんな事で狼狽えんなよ。ひ、百億ぐらい、賞金としては、だ、妥当だよ」
腰と歯をガクガクさせながら両腕を組み、虚勢を張る説得力が微塵も感じない奏根の言葉に、静香が、「百億円で豊胸手術でも受ければいいじゃん。ね、ペチャパイ優勝者」と嫌味ったらしい笑みで口にする。
「我ええ加減にせえよ!」
それに対しブちぎれる奏根。
そんな二人のやり取りを見て、芙美たちだけでなく、イリアスたちも大笑いする。
そして、司会者のお兄さんが「シャルトエキゾチックチーム前へ」と誠意を込め理亜たちを呼ぶ。
「「はい!」」
奏根たちは気合を入れ直し、覇気のある声で口にすると、横一列になって、檀上の上に上がる。
「おめでとうございます」
審判のお兄さんが笑顔で賞金を入れたアタッシュケースを一人一人に手渡していく。
ニヤニヤしながらお金を受け取る奏根たち。
こう言う時、人は下卑た生き物になると、改めて実感させられた由紀子。
その表情も、見てらんないね。見たいな呆れた物だった。
そして、理亜の番になる。
「どうぞ、おめでとうございます」
笑顔でアタッシュケースに入った100億を手渡そうとする審判のお兄さん。
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