
第四十四章 乱歩・気流 敗れる? 六話
高貴は知留の前に出ると、再び、重さが感じられなかった。
確かに接触している感触はある。
なのに、知留の先程までのパワーが微塵も感じられなかった。
かと思いきや、強く押してくる。
そして、再び力が感じられない。
高貴は知留の押しては離す様なリズムに翻弄され、後ろに体重をかけすぎてバランスを崩してしまう。
その隙に知留は前に出るとジャンプした。
奏根はブロックされる事を当然ながら、先程の高貴と知留のやり取りを見ていたため予想出来ていた。
ゴール下に居る高貴に土壇場でパスを出そうにも、バランスを崩している高貴にパスは渡せない。
なので、奏根は一か八か、知留と勝負する事にした。
「うおおおー!」
奏根が雄たけびを上げながらリングに叩きつけようとした時、知留は空中で奏根のボールを手に触れると、押し返そうとする。
奏根は両手でダンクしようとしているのにも関わらず、知留は片手。
なのに、奏根はパワーで負け、ボール事、後ろに跳ね返された。
尻からコートの下に落ちた奏根。
「ルーズボール!」
そこで、知留がブロックしたボールはまだ生きていて、左サイドのコーナーに差し掛かった時、智古が声を上げる。
そのボールを先に手にしたのは、遥だった。
遥は突っ込むようにして、ボールを内側に叩くと、ベンチエリアに突っ込み、銅羅達のベンチにぶつかる。
「遥さん⁉」
銅羅たちは取り乱す様にして、遥の身を案じ、すぐに遥に駆け寄る。
遥が叩いたボールを代野が手にし、必死な形相で奏根たちのリングにドリブルして向かって行く。
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