クリーチャープレイバスケットボール 第四十九章 二つの愛 二話

第四十九章 二つの愛 二話

 怒りを爆発させたかのように、輝美が銃口を郁美に向け、すぐさま引き金を引こうとするが、郁美はそれよりも早く、輝美の銃を手にしている指を斬る。

 「ぐっ!」

 なんと、輝美は右手の人差し指を斬り落とされてしまった。

 血と指が床にボトリと落ち、痛みで呻き声を上げ、斬られた箇所の指を抑えながら蹲ってしまう輝美。

 「今時の警察は知らないの? 接近戦では銃より刃物の方が優れている事を。それに弾切れでしょ? 日本の警察の銃のモデルは多種多様だけど。貴方の手にしているモデルはS&W M36.装弾数は五発。貴方は私が背後を向いている内に引き金を引けばよかったのにね。そうすれば指は失わずに済んだものを。馬鹿な男」

 冷たい目で口にする郁美。

 そこで、明人は「母さん! 止めてくれ! これ以上、罪を重ねるのは!」と怒涛の憩いで口にする。

 「明人。貴方は私以上に汚れているわ。殺した数なら、貴女の方が圧倒的に多いはずだし。それにね、これ以上、醜く生きるのは止めなさい。ただでさえ、母さん、貴方たちに……」

 明人に横目を向け、淡々と口にする郁美だったが、最後でかなり歯切れが悪くなる。

 そこで輝美は、()め上げるようにして郁美に目を向ける。

 「明人。こいつはもうお前の母親じゃない。ただの獣チクショーだ!」

 声を張り上げ、押し蹴りする輝美。

 郁美は意にも返さず、バックステップで回避する。

 すると、善悟が「うおおおぉぉ――!」とケンタウロスが張り上げる様な声で郁美に大き目の鍋の蓋を向けて突進する。

 盾代わりにした鍋の蓋に思わず目を剥く郁美。

 郁美はそれを横に移動し回避すると、すかさず明人が右ストレートの拳を郁美の腹部に叩きこむ。

 「うっ!」

 怯んだ郁美にすかさず、輝美がラグビーのタックルをかます。

 二回も腹部に打撃を食らった郁美。

 輝美はそのまま郁美を押し倒し、背後を向かせると、すぐに善悟が手錠をかける。

 「お、終わった」

 しんどそうに息を荒げ、心の底から安堵する善悟。

 明人は終わったと言うのに、悲し気な表情を浮かばせる。  

 その目は母親である郁美に向けられていた。

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