
第四十七章 裏にはないルール 二話
一方、アサルトハイドチームは。
「皆さん、ここからは防戦一方の展開になります。勝利の盃は我々の前に置かれています。後はそれを手にするだけ。なので取りに行ってください」
「「はい!」」
銅羅が激励も含め、イリアスたちを鼓舞する。
イリアスたちもその思いに答える。
「遥、けがの具合は大丈夫?」
「ええ~。もう大丈夫よ~。でも今から出ても、エクストラロードを消耗しきった私じゃ、出る幕はないかもだけど~」
賀古が気にかけると、遥はおっとりしながらもどこか艶笑に答える。
「いやいや、遥はエクストラロ―ドなくても十分戦力になるよ。まあ、不幸中の幸いに、木佐が居ない事だけど」
代野がどっとした心配事が取れたように、安堵の息を吐く。
「そう言えば監督。木佐さんは今どこに?」
そこで、素朴な質問をしたイリアス。
「木佐さんなら、今頃、医務室でギプスを巻かれ、安静にしてると思いますが、私個人的には、嫌な予感がします」
何か不安要素でもあるかのように、嫌な汗が出る銅羅。
「そこに意識を研ぎ澄ませても徒労と言うもの。木佐がこの場に居ない事が、万事解決の糸口だと言う事を忘れてはならぬ」
「いやいや、それはそれで木佐ちゃん可哀そうでしょ」
飛翔が瞑想でもしているかのように、淡々と言うと、賀古が引きつった笑みでツッコむ。
すると、銅羅が「どうぞ代野さん」と水筒を渡す。
「ありがと監督」
代野は普通に受け取ると、その水筒の中身を疑いもせず、がぶ飲みし始めた。
そこで銅羅は不敵に微笑む。
そうこうしている内に、第四クウォーター開始前のブザーが鳴る。
理亜たちは、身を引き締めコートに戻る。
イリアスたちボールから始まり、飛翔がボールをドリブルして運んでいく。
加奈はボールを奪おうと飛翔に突っ込む。
ハーフラインで飛翔はレッグスルーで右手にボールを持ち替えると、加奈が触れるギリギリのディフェンスをしていた。
飛翔はビハインドパスで左に居るイリアスにパスを出そうとした。
それを読んでいた加奈は、飛翔の左前に出て、片手を伸ばす。
すると、飛翔は咄嗟の判断で、エルボーパスをする。
左肘で突かれたボールは、右サイドに居る賀古の元へ。
賀古はボールを受け取ると「もう君のエクストラロードは消耗した。ここからは対等だな」とニヤリとしながら代野を無視し、目の前に居る芙美に口にする。
だが、今度は芙美が頬に笑みを浮かべる。
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