
第四十六章 縮まらない差 二話
パスを受け取ったイリアスはフリースローラインにまでドリブルし明鏡止水、抜刀、二の太刀でシュートを決める。
百九対百二十六となってしまう。
雲行きがまたもや暗くなってしまった。
残りの第三クウォータ時間は、二分を切る。
加奈がボールを手渡しで手にすると、飛翔が明鏡止水、抜刀の構えで突っ込んでくる。
前屈姿勢から、それを察した加奈は、バックステップで一度距離を取ると、片手でボールをぶん投げる。
力強い投擲。
十中八九、曲がるパス。
それは、飛翔の予想通り右に投げていたボールが急激に左に曲がり、代野を通り過ぎると奏根の手に渡る。
さすがの飛翔でも曲がるパスをエアコネクトで弾けなかった。
軌道が読みづらいので仕方なくと言った感じで見送り、気を取り直し、加奈のマークに着く。
奏根は、ボールを両手でしっかり受け取めると、ボールを手にしたまま、右足を軸にクルクルと回りだす。
そこで竜巻が発生すると、賀古でも迂闊に近づけづ、それどころか後ろにずるずると下がっていってしまう。
竜巻の中に身を置いていた奏根は、竜巻ごと、ジャンプする。
とぐろを巻く様にして斜め上にアーチを描く奏根。
そこで、イリアスが明鏡止水、抜刀、一の太刀で竜巻をかき消した。
「取らせてもらいます」
「やなこった!」
空中で奏根のボールを両手で掴み、奪い取ろうとするイリアス。
奏根は駄々をこねた子供みたいなリアクションで奪われないように引く。
お互い奪い合おうと必死。
綱引きの様な光景。
そこで、奏根は、後ろに引くのではなく、ボールを斜め後ろに引き始めた。
力の入れ具合も変わり、イリアスは思わず手を放してしまう。
奏根は空中でクルクルと再び回転し始めた。
「消されたならまた発生させればいい! 芙美! 借りるぞ! お前の乱歩・気流!」
何をする気なのか、目を凝らして奏根を見るイリアス。
なんと、奏根はかき消されたはずの竜巻を、再び空中で発生させる。
イリアスは驚愕しながら、竜巻に弾かれ、コートの下に叩きつけられるように落ちた。
轟音を発生させ、竜巻の中に居る奏根が、リングにボールを両手で叩きつけようとした。
知留は、強弱をつけたスクリーンアウトで高貴の前に出ると、リングの下でジャンプする。
最初に知留は、奏根の外側に発生されている竜巻とぶつかる。
両手で押し留めようとする知留。
「ぐぐぐぐぐっ」
奥歯を噛みしめ、何としてでも奏根のボールにまで手を伸ばしたかった。
誰もが竜巻に弾かれ飛ばされると思ったその時。
なんと、知留はリングの輪に手を伸ばし、リングの輪を掴むと、ぶら下がった状態で、弾き飛ばされない様にする。
「なにっ⁉」
奏根は驚愕する。
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