クリーチャープレイバスケットボール 第四十七章 裏にはないルール 三話

第四十七章 裏にはないルール 三話

 「残念じゃな。我のエクストラロードは研鑽を積み、進化した。とくと刮目するが良い」

 賀古を見通したようなその言葉に、賀古は悪寒が走った。

 言い終わったその直後、芙美は三人の幻影を生み出す。

 「なっ⁉ 馬鹿な!」

 本来、エクストラロードの持続時間は十分。

 それ以上、持続させるのは、ペナルトギアを保持し、エクストラロードへと変化を遂げた歴代の選手たちでも不可能だった。

 なので、常識的に考え、エクストラロードの解放時間は一クウォータの十分が相場だった。

 だが、芙美は違った。

 理亜たちとの練習が終わっても黙々とエクストラロードを変化させ、持続時間を伸ばそうと努力していた。

 それに付き添っていた順子は「見せてやれ、芙美」とクールに口にする。

 豪真たちも驚いていた。

 芙美は、三人の分身を生み出すと、両サイドから二人の芙美が、挟み撃ちにでもするかのように、賀古が手にしているボールに手を伸ばす。

 いきなりピンチになった賀古は、焦って両手で力強くボールを手にすると、ジャンプし、オーバーヘッドパスで左サイドに居るイリアスにパスを出そうと、頭頂部にボールを移動しようとしたその時、芙美が上へ向ける際に加古のボールを上から下に弾く。

 カットしたボールを芙美が手にすると、高速ドリブルで敵陣のリングに向かって行く。

 飛翔とイリアスが芙美の前に立ち、明鏡止水、抜刀、一の太刀で、芙美の両サイドに潜り込み、ボールを奪おうとしたその時。

 「悪いが、抜かせてもらう」

 目の前の芙美が、横一列に六人の幻影を生み出す。

 折り重なった紙を、横一列に広げるみたいにして、現れた六人の芙美。

 これにはイリアスと飛翔もどうしようも出来なかった。

 六人の芙美が時間差をかけ、イリアスと飛翔を横切る。

 そして、六人の芙美は、断続的にダンクをかました。

 ボールがリングに叩きつけられる本物の音が、会場中に鳴ると、観客たちは思わず立ち上がり喝采を上げる。

 点数は百十一対百二十八。

 「まさか、エクストラロードの延長。ありえない。今までどの歴代の選手たちでも、延長できる者など、一人も……」

 目を大きく開きながら、銅羅は動揺が途切れないでいた。

 芙美はメンバーたちと笑顔でハイタッチして戻っていく。

 そこで、奏根はある違和感を感じ始めた。

 「ん? 何だあいつ?」

 それは、代野だった。

 代野は何故か、少しふらついていた。

 奏根は、脱水症状の類かと思い心配し、代野に近付き「おい、大丈夫か?」と心配しながら口にする。  

 すると、代野は目が虚ろで、視点が定まっていない様に見えた。

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