
第四十八章 麻痺による進行 一話
「流石ですね。ですが……」
銅羅は、理亜のバーチャルディメンションの効果を目の当たりにしても一切動揺せず、それどころか、勝ち誇っている様な面持ちでさえいた。
奏根たちも、間違いなく点が取れる、そう誰もが思っていた。
だが……。
パン!
「ッ⁉」
「なっ⁉」
なんと、理亜がスリーポイントシュートを打とうとした体制から、代野が理亜のボールをカットした。
まさかの事にシャルトエキゾチックチーム全員が驚愕する。
ボールをカットし、すぐさま手にした代野は、理亜たちのリングに向かって行く。
ピッタリと横に付き、代野を追いかけていた理亜はバーチャルディメンションを発動する。
しかし、代野には一向に変化はなく、酔っぱらいながらドリブルして行く。
何とか代野の前に出た理亜。
すかさず、奏根と芙美も理亜に加勢する。
芙美は乱歩・気流で前に三人、左右に一人ずつ、自分を配置させ、一斉にボールを奪いにかかる。
「ひっく。うらうら~」
呂律が回らない様に素っ頓狂な声音で代野はそう言いながら、背後にボールを回し、背中から上にボールを放り投げる。
突然の事に反応速度が鈍ってしまう理亜たち。
そこで、代野は右手で背中から上に放り投げたボールに合わせる様に跳躍し、左手でバレーのスパイクの様にボールを叩きつける。
強く叩かれたボールは、四角いマスに当たり、リングの中に急降下して入ってしまった。
「うらうら~ひっく」
酔っぱらいながら喜びもせず、自分のコートに戻っていく代野。
これで点数は、百十一対百三十二。
まさか、理亜のエクストラロードが通じない相手なのか?
「どう言う事じゃん? 理亜のバーチャルディメンションって、殆ど無敵のイメージだったのにじゃん」
「私にもどう言う事なのか、さっぱりです」
静香が怪訝な眼差しで代野を見ていると、高貴も眉を顰める。
「おそらく、酔っているのと関係があるのかもね」
「ええ。脳が麻痺している相手に、洗脳の効果は乏しいのかもしれません」
由紀子と豪真は訝しい目を代野に向ける。
それを聞いた智古たちの表情に暗雲が立ち始める。
「いいかふしだら女。あの六番は俺と加奈でマークする。お前は点を取る事だけに集中しろ」
「うん、分かった」
奏根が理亜の肩に腕を回し、耳打ちすると、理亜は躊躇なく頷く。
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