第四十三章 応酬の行方 六話

第四十三章 応酬の行方 六話

 「サイクロンシュートネクストーー!」

 奏根はそのままダンクで決めようとした。

 その時、知留が高く飛びあがった。

 高貴は優位なポジションを取られてしまい、スクリーンを掛けられなかった。

ジャンプした知留は、奏根のダンクを片手で押さえつける。

 空でボール押し合う二人。 

 激しい火花でも飛び散るかのような。

 「うおおお!」

 「はあああぁ!」

 気合で負けない様なぶつかり合い。

 そして、奏根は押し合いに勝ち、見事ダンクを決めた。

 「ピッ! オフェンスチャージング!」

 「なっ!」

 審判のお兄さんのまさかの判定に、順子は目を剥く。

 「あー、惜しかったねえ」

 自分の孫の遊戯でも見ているかのように可愛らしく悔しがる理亜。

 それを肌で感じ取った奏根は理亜を狂犬が小動物を威嚇する様な目を剥けると、理亜はせわしなく口笛を吹く。

 ファールを取られた奏根は片手を上げる。

 知留は少しホッとしていた。

 「どんまい。惜しかったよ奏根ちゃん」

 「ああ」

 エノアが奏根に近付き労いの言葉をかけると、奏根は気合十分と言った感じで頷く。

 試合は再開され、飛翔がボールをドリブルで運んでいく。

 第二クォーターの残り時間は三十秒を切る。

 そこで、奏根、芙美、聖加、エノアが、四人で飛翔のディフェンスにつく。

 それには飛翔も驚く。

 飛翔は遥にパスを出したかったが、それがすぐに出来ず、ハーフライン手前で止まってしまう。

 さすがの遥でも自分をワープさせても、飛翔の周りにいる奏根たちの中に入る事は出来ない。

 それほど、ファール擦れ擦れの際どいディフェンス。

 「如何にエクストラロードが優れているとはいえ、あの九番にパスさえ通らなければ残り時間を無得点で押さえられるかもな」

 豪真は眉を顰め、躁願いを込める。

 「でもさ、残りのメンバーの人たちだって実力者揃いだよ。あの九番の選手だけにしかパスしないなんてこともないだろうし」

 智古が不安な表情で、嫌な展開を予想してしまう。

 「まあ、さっきの十三番見たいな能力だけあって技量がないなんて選手は稀だろうしね。かと言って、あの九番のエクストラロ―ドをどう攻略するかだが、現状、あの子たちのあのディフェンスが理にかなっているのも事実。見守るしかないよ」

 由紀子の分析に、納得する事しか出来なかった豪真たち。

 そして、飛翔が打って出る。

コメント

タイトルとURLをコピーしました