クリーチャープレイバスケットボール 第五十二章 最高の思い出を君に届ける 四話

第五十二章 最高の思い出を君に届ける 四話

 彰の葬儀では、理亜と豪真は抜け殻の様になっていた。

 それを見た奏根が、優しく言ううでもなく、理亜と豪真に活を入れた。

 「しっかりしろ! 二人がそんな顔してたら、彰が生きてきた三年間を奪うんだぞ! 彰は生きてきたんだよ! この世界を! だからお前らが、そんなんでどうすんだよ! 彰の事を思うなら、幸せになれよ! いっぱい年食って! 彰にたくさん、聞いていて幸せになれる様な見上げ話を作れよ! なあ!」

 奏根は理亜の両肩をがっしり掴み、泣き叫ぶようにして口にする。

 ありったけの願いを込め。

 まるで、神に祈るかのように。

 「そうね、ちゃん……ごめん」

 理亜は泣き崩れた。

 そんな理亜を優しく抱きしめる奏根。

 「すまんな」

 豪真も鼻を啜りながら、奏根と理亜に謝罪する。

 「頼んだぜ、監督。理亜を幸せにして、二人で笑顔で、彰に会ってくれ」

 「ああ。必ず!」

 奏根は涙を流しながら豪真に上目を向き、頼み込む。

 豪真も奏根の気持ちに答える様に、再び覚悟を決めた。

 その日の夜。

 葬儀も終わり、理亜は豪真の家で急にこんなことを口にした。

 「ねえ、豪真さん。私、ピアニストになりたい」

 「えっ! ピアニスト⁉」

 身を引き締め口にする理亜。

 その声音には覚悟がしっかりと根付いていた。

 「うん。私ね、子供の頃からよくピアノの演奏のテレビ番組を見てたの。いつか自分もあのステージに立ちたいって気持ちが、今になって溢れ出てきちゃって」

 子供時代から、理亜はピアノの演奏の番組を食い入るように見ていた。

 それは、バスケをやっていた時も変わらない。

 だが理亜に取って、バスケは一心同体みたいに切っても切れぬ縁で結ばれていた。

 ピアノまで並行して取り組むことはできない。

 ましてや、当時、貧困時、ピアノなど買うお金も無ければ、習い事をするお金もない。

 なので、バスケットボールやバッシュを買うので精一杯だったのだ。

 豪真は一驚すると、理亜の覚悟の決まった表情を見て、すぐに笑みになる。

 「ああ。もちろんいいさ。彰にも聴かしてあげよう」

 「豪真さん……うん!」

 優しく言ってくれる豪真に、理亜は目をウルウルさせながらも笑顔で力強く頷く。

 その日の内に、ピアノを買い、教えてくれる講師の先生とも契約を結んだ。 

 次の日には、豪真が講師を頼んだ先生が自宅に訪問する。

そして、猛特訓が始まった。

かなり厳しい教え方だったが、理亜はめげず、直向きに練習に取り込んだ。

 最初はチューニング、そしてドレミファソラシド、次にカエルの歌、徐々に上達していけば、マライア・キャリーの恋人たちのクリスマスなどを弾いていく。

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